スズキ図書館

最近読んだ本の内容を紹介する書評ブログです。ビジネス書が中心です。これから皆様が読む本を選ぶ際の参考になれば幸いです。

【書評】「企業内人材育成入門」中原淳(編著)

こんばんは、スズキです。
今日は「企業内人材育成入門」中原淳(編著)を紹介します。

概要

 現在の日本には被教育経験を持たない人はほとんどいません。誰もが教育を受けた経験を持っています。それゆえに誰もがその経験に照らして自分なりに教育を自由に語れてしまいます。こうして企業の先輩や成功者によってロマンティック、ノスタルジックに語られる「私の教育論」には弊害も少なくありません。なぜなら「私」にとっての教育論がそのまま「彼、彼女」に当てはまるとは限らないからです。

 本書は「私」ではなく「企業」を主語として、どのような人材をどのように育成すればよいか、主に心理学、教育学などの側面からその諸理論を俯瞰、整理した一冊です。

著者

Amazonより引用】
・中原 淳(なかはら・じゅん)。東京大学 大学総合教育研究センター 助教授。東京大学教育学部、大学大学院人間科学研究科、文部科学省メディア教育開発センター助手、マサチューセッツ工科大学客員研究員、東京大学 大学総合教育研究センター講師を経て現職。東京大学大学院 学際情報学府助教授を兼任。大阪大学博士(人間科学)。専攻は教育工学。「手を動かす教育学」をめざす。学習効果の高い教育環境の創造が研究テーマ。共編著・共著に「eラーニング・マネジメント」「社会人大学院へ行こう」「ここからはじまる人材育成」など。日本教育工学会論文賞、奨励賞など複数受賞。研究の詳細はNAKAHARA-LABBLOG。

私の学び

 良い理論ほど実践に役立つものはないという言葉がありますが、こと教育においても同様ととらえ、本書では多くのその理論が本書では紹介されています。自分が社会人になったころはこうだった、昔はこうやっていた、、、そういった経験に基づく人材育成ではなく、企業の経営戦略に根差したHRM、P-MARGEやADDIE、ARCSなど理論やモデルにもとづいて育成の計画やカリキュラムを準備、設計、評価していく意義を痛感させられます。会社で後進の育成や指導にかかわる方が最初にとる一冊としてお勧めできる本だと思います。

【本書より引用】
・企業の経営戦略と連動した人事諸施策を遂行していこうとする考え方を戦略的HRM(Human Resource Management)という。今でもたしかに「企業は人なり」ではあるが、それは単なるメタファーではなく、競争力の向上という明確な目的があるのだ。


・企業の人材育成は「好業績につながる行動ができるようになるため」そして「適正な職種やポストに就くため」(コンピテンシー)といったより強い具体性を持ったものになっている。


・学習に対する3つの異なる考え方として「行動主義」「認知主義」「状況主義」がある。


・成人教育論(Andragogy)の用語「P-MARGE」。これを踏まえると、彼らのカリキュラムを構築する際には問題解決や課題解決を中心においた編成にするほうがよいと言われている。
  Practical:大人の学習者は実利的である
  Motivation:同期を必要とする
  Autonomous:自律的である
  Relevancy:レリーバンスを必要とする
  Goal-oriented:目的志向性が高い
  Experience:豊富な人生経験がある


・税務、会計といった分野については、実務が理論体系のうえに成り立っているとみなすことに異存はないだろう。しかしマーケティングや経営戦略となると、理論体系は存在するものの、実務が理論体系のうえに成り立っているとは言い難く、理論体系の有用性についても意見が分かれるに違いない。これらの分野において、暗黙知・経験値の重要性はしばしば指摘されることだ。


・経験学習モデル(コルブ):省察、概念化、実践、経験。
・ARCSモデル(ケラー):注意、関連性、自身、満足感。
・ADDIEプロセス:分析、設計、開発、実施、評価。


・キャリアコンピタンシー:仕事を膨らませる。布石を打つ。計画的にやりたい仕事へとキャリアを進める、ときには思い切ったキャリアチェンジをしてキャリアを振る。


・キャリア開発とは個人が一人で行うものではない。キャリアとは、個人を取り巻く実践共同体に参加し、仲間とともに活動することを通じて次第に確立していくものである。