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【書評】「ESG思考 -激変資本主義1990-2020、経営者も投資家もここまで変わった-」夫馬 賢治 (著)

こんばんは、スズキです。
今日は「ESG思考 -激変資本主義1990-2020、経営者も投資家もここまで変わった-」夫馬 賢治 (著)を紹介します。

概要

 気候変動に対処しなければ自然災害が増える。水資源の問題に対処しなければ事業活動や生活に必要な水の確保ができなくなる。原材料や食糧の問題に対処しなければ企業の生産活動や生活に必要な食事さえできなくなる。

 こういった課題は対応しなくてもすぐに困るものではないですが、時間が経てば経つほど悪影響が広がってゆき、私たちや企業がまずいと思った時にはすでに大きな損害を被り、生活や事業の継続性が脅かされます。本書は、こういった長期的な思考のもとでの経営に切り替わろうとしている世界の潮流と、そこから大きく出遅れている日本の状況を指摘した一冊です。

著者

Amazonより引用】
・夫馬 賢治。株式会社ニューラル代表取締役CEO。サステナビリティ経営・ESG投資コンサルティング会社を2013年に創業し現職。同領域ニュースサイト「Sustainable Japan」運営。環境省ESGファイナンス・アワード選定委員。ハーグ国際宇宙資源ガバナンスWG社会経済パネル委員。ハーバード大学大学院リベラルアーツ修士(サステナビリティ専攻)。サンダーバード国際経営大学院MBA東京大学教養学部卒。

私の学び

・経済認識による夫馬さんの4象限モデルで見たときに、まさしく日本に根深く染みついている考え方はオールド資本主義(事業活動と環境活動は別物であり、環境活動は儲からない)であり、欧州や米国がルールを作りめざしているESGの長期思考(環境価値を高めることが企業価値の向上につながる)の考え方との間で大きなギャップがあることに気づかされました。こういった事実、現状のギャップを正しく認識し、危機意識を持つことからのスタートが重要だと感じます。

【本書より引用】

・夫馬の4象限モデル
 ①ニュー資本主義(サステナビリティ、ESG、CSV、長期経営)
 ②陰謀論(欧米陰謀論、中国陰謀論
 ③脱資本主義(里山資本主義、環境アクティビスト、トリプルボトムライン社会主義
 ④オールド資本主義(オールドファイナス、短期経営)


リーマンショックを機に欧米では多くの企業が、批判をかわすためだったはずのCSRにおいて定量目標を設定したり、企業の長期的なゴール実現に向けた課題設定へと変化させたりした。さらにCSRという言葉そのものがアメリカでは徐々に使われなくなり、サステナビリティに置き換わっていった。

リーマンショックから3年後、マーケティング論で有名なハーバード大学マイケル・ポーター教授の論文で、企業の長期的成長のための新たなアクションを「共有価値の創造(CSV)」と名付けた。

 

・長期的な環境・社会課題の変化を具体的に分析していくと、回りまわって企業自身の損が跳ね返ってくることが分かってきた。今すぐ対応しないと困るような短期的リスクではない。しかし対応しなければじわじわと悪影響が及び逃げるチャンスを失って死んでしまう。こうして長期思考が経営の中に根付いてくる。

 

・環境活動家グレタトゥンベリの脱資本主義的な主張に対し「環境より経済が重要」とオールド資本主義を丸出しにした反論が日本で巻き起こったが、ニュー資本主義へ移行した欧米の企業や投資家の間では大きな共感を呼んだ。

 

・企業においては、課されているルールを順守すればあとは自由ということではなく、20年30年と先を見据えたときに今から準備しておかなければいけないリスクは何で、負けてはいけない戦いどころはなにかを早めに見定めていかなければならない。長期戦略や長期経営を考える上では、社内の状況をいったん忘れ、思い切って長期的な外的要因から考えることに振り切ってしまったほうが議論のとっかかりが見えてくる。