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最近読んだ本の内容を紹介する書評ブログです。ビジネス書が中心です。これから皆様が読む本を選ぶ際の参考になれば幸いです。

【書評】『ダブルハーベスト――勝ち続ける仕組みをつくるAI時代の戦略デザイン』堀田創・尾原和啓 (著)

こんばんは、スズキです。
今日は『ダブルハーベスト――勝ち続ける仕組みをつくるAI時代の戦略デザイン』堀田創 (著)を紹介します。

概要

 AIがコモディティ化し、市場競争の焦点が「技術」ではなくなってきたときに大切になるのが戦略のデザインです。ビジネスにAIを導入することによって自分たちの競争優位性を持続的に高めることができるか?AIの実装によって利益を生み出すためのループを幾重にも重ねられるか?そして勝ち続ける仕組みをデザインできているか?その仕組みをダブルハーベストループと呼びます。
 本書で紹介されるこのダブルハーベストループのフレームワークは、世界的なデザインファームのIDEOがシナモンAIと共同でAI戦略デザインのワークショップを開催するなど国際的にも非常に新しい考え方、手法であり、AIビジネスの戦略デザインを先取りして今後考えたい方にお勧めの一冊です。

著者

Amazonより引用】
・堀田創(ほった・はじめ)人工知能研究で博士号を取得し、最注目のAIスタートアップを立ち上げた起業家。株式会社シナモン 執行役員フューチャリスト。1982年生まれ。学生時代より一貫して、ニューラルネットワークなどの人工知能研究に従事し、25歳で慶應義塾大学大学院理工学研究科後期博士課程修了(工学博士)。2005・2006年、「IPA未踏ソフトウェア創造事業」に採択。2005年よりシリウステクノロジーズに参画し、位置連動型広告配信システムAdLocalの開発を担当。在学中にネイキッドテクノロジーを創業したのち、同社をmixiに売却。さらに、AI-OCR音声認識自然言語処理NLP)など、人工知能のビジネスソリューションを提供する最注目のAIスタートアップ「シナモンAI」を共同創業。現在は同社のフューチャリストとして活躍し、東南アジアの優秀なエンジニアたちをリードする立場にある。また、「イノベーターの味方であり続けること」を信条に、経営者・リーダー層向けのアドバイザリーやコーチングセッションも実施中。認知科学の知見を参照しながら、人・組織のエフィカシーを高める方法論を探究している。マレーシア在住。本書が初の著書となる。

・尾原 和啓(おばら・かずひろ)グーグルでAIサービスの国内立ち上げに携わった「企業戦略×AI」のプロフェッショナル。IT批評家。1970年生まれ。京都大学大学院工学研究科応用人工知能論講座修了。マッキンゼー・アンド・カンパニーにてキャリアをスタートし、NTTドコモiモード事業立ち上げ支援、リクルート、ケイ・ラボラトリー(現KLab)、コーポレートディレクション、サイバード、電子金券開発、リクルート(2回目)、オプト、グーグルなどに従事。経済産業省対外通商政策委員、産業技術総合研究所人工知能研究センターアドバイザーなどを歴任。単著に『ネットビジネス進化論』『ITビジネスの原理』『どこでも誰とでも働ける』、共著に『アフターデジタル』などがある。

私の学び

 GAFAMをはじめとしたAIをうまく使いこなす勝ち組の企業が、AIうまく使いこなして成功しているその理由はなぜか?が腑に落ちる内容でした。AIはコンピューターである以上、入力したデータから意味のある出力を得るために人間の設計するアルゴリズムであるわけですが、単にデータを食わせ続ければビジネスが勝手に上手く成長できるわけではなく、競争優位を保ちながら成長するためのループ構造を最初に企てることが重要である、という点は納得です。このハーベストループをいかに早く作って改善していくかが、今後のAIを活用したビジネスの最初のステップとなるのだと思います。

【本書より引用】
・AIがより賢くなるようになループ構造をつくってまわすのが第一ステップとなる。必要なのは、競争力の源泉を一つだけ作って満足するのではなく、2重3重のループをつくって複数の競争優位を作ることである。


・売り手がたくさん集まれば買い手を呼び、買い手がたくさん集まればさらに売り手を呼ぶ。このような相互ネットワーク効果はいったん動き出すと好循環がずっと続いて勝手に成長していく。


・AIを賢く育てるにはE2E学習が不可欠。自前でAIモデルを構築することだ。パーツの寄せ集めを脱すれば、最初から最後まで一気通貫でAIをトレーニングすることができる。


・AIが実現する5つの最終価値
 ①売り上げ増大②コスト削減③リスク、損失予測④UX工場⑤R&D加速


・機能とデータの掛け算で最終価値を実現する。


・ヒューマンインザループは、AIと人間のコラボレーションだ。ということは、ヒューマンインザループを導入すべきなのは人間が作業していた領域、言い換えると最初からシステムの外側なのだ。


・他社にない唯一無二の価値を提供するという意味で、これをユニークバリュープロポジションと呼ぶ。時間が経てば経つほどUVPが大きくなる仕組み築くことができれば、ライバルたちは永遠に追いつけない。それを実現するのが半永久的に回り続けるハーベストループなのだ。


・ハーベストループのつくり方
 ①最終価値(AIを使うメリット)を見極める
 ②戦略へのアップグレード(シングルライン)
 ③ループ構造をつくって競争優位を持続する(ハーベストループ)


・どんなデータがハーベストループに向いているのか。一つの考え方としてはデータの「ネットワーク効果」が効くかどうかで分ける方法がある。データ量が増えれば増えるほどUXが向上し、ユーザがそのサービスから離れられなくなる効果をさす。多くのデータは初めは勢いよく学習が進むがそのうち収束する(認識の精度など)。そうならないタイプのデータがいくつかある。(個人データや店舗データ、例外データ、また地図情報など)


・ハーベストループ実現に向けた9ステップ
 ⓪ストーリーを完成させる(シングルライン構想、ハーベストループ構想、ダブルハーベストループ構想)
 ①KPIに落とし込む
 ②推論パイプラインのデザインとプレビュー
 ③初期データの特定と準備(アノテーションシンセシス
 ④初期実験とファインチューニング(PoC)
 ⑤蓄積データの「型」の特定
 ⑥UI/UXデザイン
 ⑦実装とデプロイ
 ⑧クオリティチェック
 ⑨実運用と継続効果検証


・AIによるハーベストループは最終的には地球にやさしい最適化をめざすことになる。