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【書評】『研修開発入門 「研修評価」の教科書-「数字」と「物語」で経営・現場を変える-』中原淳(著)

こんばんは、スズキです。
今日は『研修開発入門 「研修評価」の教科書-「数字」と「物語」で経営・現場を変える-』中原淳(著)を紹介します。

概要

 生徒や受講生が、授業や教育、研修の終了後に1枚のアンケートに回答する。そのアンケート結果の満足度がX.Xでしたので概ね教育は成果がありました、と経営幹部に報告される。そんな研修評価が当たり前だった業界に一石を投じ、企業研修の価値と成果を高めようと新たな評価手法を論じたのが本書です。定量評価と定性評価、研修直後と研修転移といった混合評価を通し、アカデミックなルーツを大事にしつつも企業の現場で実践できるユースケースを紹介、提案しています。企業や公教育の場で人材の育成にかかわる方にはお勧めの一冊です。

著者

・中原 淳(なかはら・じゅん)。立教大学経営学部教授。大阪大学博士。「大人の学びを科学する」をテーマに、企業・組織における人材開発・組織開発・チームワークについて研究している。ダイヤモンド社「研修開発ラボ」監修。著書に『企業内人材育成入門』(ダイヤモンド社)、『研修開発入門』シリーズ(同)、『人材開発研究大全』(東京大学出版会)、『フィードバック入門』(PHP研究所)など。立教大学大学院経営学研究科リーダーシップ開発コース主査、立教大学経営学部リーダーシップ研究所副所長などを兼任。

・関根 雅泰(せきね・まさひろ)。株式会社ラーンウェル代表取締役東京大学大学院学際情報学府修士号取得。ダイヤモンド社「研修開発ラボ」メイン講師。著書に『オトナ相手の教え方』(クロスメディア・パブリッシング)、共著に『研修開発入門「研修転移」の理論と実践』(ダイヤモンド社)、『対話型OJT』(日本能率協会マネジメントセンター)など。

・島村 公俊(しまむら・きみとし)講師ビジョン株式会社代表取締役。2015年までソフトバンクにて研修の内製化を推進し、100名を超える社内認定講師の育成に従事。新人教育やOJTトレーナーの育成にも関わる。ダイヤモンド社「研修開発ラボ」講師。著書に『10秒で新人を伸ばす質問術』(東洋経済新報社)、共著に『研修開発入門「研修転移」の理論と実践』(ダイヤモンド社)。

・林 博之(はやし・ひろゆき)。ラーンフォレスト合同会社代表社員。俳優活動等を経て、現在は研修講師として、「OJTメンター研修」や、演劇的手法・インプロ(即興劇)を通じて非言語メッセージの受発信を意識する「フィーリングコミュニケーション研修」を展開。共著に『対話型OJT』(日本能率協会マネジメントセンター)。

私の学び

 多くの企業は自社の社員に効果の高い人材育成の機会を与えたいと考えているはずですが、その効果の良しあしをどのように測ればよいのか、さらに時間やコスト、対照実験の難しさといった多くの制約のなかで評価改善を諦め、思考停止してしまってきた部分も少なくなかったのではないかと思います。評価を考える際の最初の着眼点、かけられるコストに応じた松竹梅のプランの考え方、具体的な評価メソッドと設問例など、引用、活用しやすい図説が多く実践的な内容だと感じました。

【本書より引用】
・混合評価とは、①定量データと定性データ、②研修直後データと研修転移データ、を混合させた実践的な評価手法です。


・混合評価のフレームワークには、ジェームスカークパトリックの新モデルがあります。すなわち、「レベル4:成果」からバックキャスティングして、「レベル3:行動」「レベル2:学習」「レベル1:反応」の測定項目を決めます。


・カークパトリックは、重要なステークホルダーである経営層が「経営に何を期待しているのか?」を明確にするべきだと主張しました。彼は経営層に対して3つの質問をすることを勧めています。
 「どうなれば成功と言えますか?」
 「どんな証拠が必要ですか?」
 「どうすれば成功したかどうかを測れるでしょうか?」


・サクセスケースメソッド
 「学んだことを仕事で活用しなかった」
 「学んだことを仕事で活用し、良い結果が出た」
 「学んだことを仕事で活用したが、まだ結果が出ていない」


・混合評価の3コース
 「研修直後アンケート+研修転移のリマインド」
 「研修直後アンケート+研修転移のリマインド+現場実践度の確認」
 「研修直後アンケート+研修転移のリマインド+現場実践度の確認+生声ヒアリング」