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最近読んだ本の内容を紹介する書評ブログです。ビジネス書が中心です。これから皆様が読む本を選ぶ際の参考になれば幸いです。

【書評】『リカーリング・シフト-製造業のビジネスモデル変革-』青嶋 稔(著)

こんばんは、スズキです。
今日は『リカーリング・シフト-製造業のビジネスモデル変革-』青嶋 稔(著)を紹介します。

概要

 顧客と継続的につながり、収益を上げ続けるリカーリングビジネスモデルへの移行を掲げる企業が増えています。しかし、実際にリカーリングシフトに取り組んでは掛け声倒れに終わってしまうケースがほとんどではないでしょうか。本書はその原因を解明し、なぜ今リカーリングモデルなのか?そしてリカーリングシフトに立ちはだかる4つの壁について、先進事例とともに解説しています。販売後も継続できるビジネスモデル「リカーリングモデル」をめざし事業戦略を練ろうとされている方にお勧めの一冊です。

著者

Amazonより引用】
青嶋 稔。野村総合研究所 コンサルティング事業本部 シニアパートナー。1988年大手メーカー入社、米国法人営業マネジメント、CRMプロジェクトなどに従事。2005年野村総合研究所入社。グローバル事業、技術、電機・精密・素材産業のコンサルティングなどを担当し、現職。

私の学び

 モノ売りからコト売りへの脱却をめざし、サービスシフトというトレンドに対応しようとした企業の多くが、価格を単純に定額課金や従量課金に変えただけで本質的には事業構造がなにも変わっていない。リカーリングシフトをマネタイズの問題だと捉えている企業が現実には多いかもしれません。

 コマツ日立製作所、シュナイダー、シーメンスなど製造業の雄が、いかにリカーリングビジネスへのシフトにむけた4つの壁を乗り越えようとしているか、巻末にあるリカーリング戦略策定手順はこれから検討を始めるにあたっての観点として参考になると思います。

【本書より引用】

・リカーリングへの転換を妨げる4つの壁
①データ取得と知財の壁:他社がもつデータや知財を取得するためのルール作りや規格化ができず、頓挫してしまう
②人材の壁:ものづくりとデータ分析の両方が理解できる人材が圧倒的に不足している
③ビジネスモデルの壁:自前主義が浸透している日本の製造業では、他者との連携がうまくいかない
④投資回収期間の壁:初期投資が大きく、回収期間は長いというリカーリング・ビジネスの特徴が社内の評価軸とあわない

 

・「リカーリングモデル」の類型
サブスクリプション:消耗品、保守、機器運用などを定額で提供するモデル
②IoT与信:機器センサーが集めたデータを活用し、次世代型ローンを提供するモデル
③マネー
ジドサービス型:機器の運用、管理を一括で請け負うモデル
④成果報酬型:コスト削減、業務効率化など成功した場合に料金を徴収するモデル
⑤業界プラットフォーム型:機器にとどまらない顧客の業務支援

 

・日本企業のリカーリング戦略
①顧客との価値協創
②エコシステムの構築
③業界プラットフォーマーへのプラグイン戦略

 

・リカーリング戦略の構築手順
①自社の強みの棚卸
②ビジネスモデル仮設の構築
③MVPの定義とPoCによる検証
④パートナーシップ構築によるエコシステムの構築
⑤事業開発プロセスの標準化
⑥横展開できる事業モデルの普遍化