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最近読んだ本の内容を紹介する書評ブログです。ビジネス書が中心です。これから皆様が読む本を選ぶ際の参考になれば幸いです。

【書評】『コーポレート・エクスプローラー(新規事業の探索と組織変革をリードし、「両利きの経営」を実現する4つの原則)』アンドリュー・J・M・ビンズ、チャールズ・A・オライリー、マイケル・L・タッシュマン(著)

こんばんは、スズキです。
今日は『コーポレート・エクスプローラー(新規事業の探索と組織変革をリードし、「両利きの経営」を実現する4つの原則)』アンドリュー・J・M・ビンズ、チャールズ・A・オライリー、マイケル・L・タッシュマン(著)を紹介します。

概要

 コーポレートエクスプローラーとは、成熟した企業の内側からイノベーションを起こすリーダーのことです。成熟した企業は多くの資産を持っているが、その資産をいかに活用して破壊的な新規事業を迅速に成功させるのか?

 本書は、大企業における新規事業創生の成功事例と失敗事例の差を解き明かしながら、コーポレートエクスプローラーを行動に駆り立てる戦略的豊富、イノベーションの原則、両利きの組織、探索事業のリーダーシップのサイクルの重要性を論じています。両利きの経営の概論の先にある、具体的な実践論を学んでみたい方にお勧めの一冊です。

著者

Amazonより引用】
[著者]
アンドリュー・J・M・ビンズ Andrew J. M. Binns
ボストンを拠点とするコンサルティング会社チェンジ・ロジックの共同創業者。マッキンゼーIBMなどで25年にわたりコンサルタントとして活躍。企業やビジネススクールなどでの講演も多数。

チャールズ・A・オライリー Charles A. O’Reilly
スタンフォード大学経営大学院教授(The Frank E. Buck Professor of Management)。チェンジ・ロジックの共同創業者。主な著書に『両利きの経営』(東洋経済新報社)などがある。論文も数多く執筆し、『カリフォルニア・マネジメント・レビュー』誌の年間最優秀論文に三度選ばれた。

マイケル・L・タッシュマン Michael L. Tushman
ハーバード・ビジネススクール教授(Baker Foundation Professorなど)。チェンジ・ロジックの共同創業者。主な著書に『両利きの経営』などがある。コロンビア大学経営大学院、マサチューセッツ工科大学(MIT)、フランスの欧州経営大学院(INSEAD)などで教鞭をとってきた。

[訳者]
加藤今日子。翻訳者。愛知県立大学国語学英米学科卒。主な訳書に『ベゾス・レター――アマゾンに学ぶ14カ条の成長原則』(すばる舎)、『マグネティック・マーケティング――新規顧客を引き寄せて離さない集客システム』、『Google広告「超」集客術――世界最大のインターネット広告で新規客を集める方法』、『ストーリー説得術――人を動かす5つの実践ステップ』(いずれもダイレクト出版)などがある。【ウェブサイト】Ksほんやく工房(https://kyokokato-trans.com/

[解説者]
加藤雅則。(株)アクション・デザイン代表取締役、IESE(イエセ)客員教授。2000年以来、上場企業を中心とした人材開発・組織開発に従事する。経営陣に対するエグゼクティブ・コーチングを起点とした対話型組織開発を得意とする。「両利きの経営」の提唱者であるオライリー教授(スタンフォード大学経営大学院)の日本における共同研究者であり、オライリー教授が会長を務めるコンサルティング会社チェンジ・ロジック社の東京駐在を兼務する。大手企業を中心に、人材育成・組織開発・後継者育成に関するアドバイザーを多数務める。主な著書として、『両利きの組織をつくる』(チャールズ・A・オライリー、ウリケ・シェーデとの共著)『組織は変われるか』(ともに英治出版)がある。

私の学び

 成熟した歴史ある企業の中からなかなかイノベーションが起こらない、大企業病などと言われることもよくありますが、マイクロソフトAGCといった歴史ある大企業の中から破壊的なイノベーションが生まれた事例とアプローチ方法が本書では語られています。

 着想、育成、量産化やハンティングゾーンといった考え方は、多くの書籍で語られるビジネスモデル開発、事業戦略の理論に通じるものでイメージもつかみやすく、ビジネス創世の様々な議論の場で使いやすい言葉ともいえるかと思います。組織の在り方についてもそれぞれ特徴、注意点を体系立てて整理されており、自分たちの今の組織の長所と短所の再確認や、今の事業体のフェーズにふさわしい構造を考えるヒントとしても利用できる内容であるとも思います。

【本書より引用】
・創造的破壊を起こす企業には、4つの特徴があった。第一に、経営陣が創造的破壊の機会や脅威に負けないほどの壮大な「戦略的豊富」を持ち、行動を変える必要性も理解していた。第二に、グローバルなイノベーション業界が体系化した「イノベーションの原則」を事業推進に取り入れていた。第三に、革新的な新規事業をコア事業から分離する「両利きの組織」が見られ、新規事業には成長に欠かせない裁量権を守りながらコア事業の資産も活用できた。第四に、コーポレートエクスプローラーだけではなく、リソースを投じて新規事業を後押しする覚悟のある経営陣のあいだにも明らかな組織能力として「探索事業のリーダーシップ」が見られた。


・感情と論理と意欲に訴えかける戦略的豊富こそが事業成功のカギだ。社内の団結が必要だ。ハンティングゾーンを定めて、新規事業の方向性に多少の縛りを設けるのも重要だ。


・ハンティングゾーンを見つけるには次の四つの要素を意識するといい。
①社会全体の潮流
②自社の優位性
③市場魅力度
④顧客を惹きつける課題

 

イノベーションの原則は、着想、育成、量産化である。

 

・両利きの組織には主に3種類ある。
①フォーカス型:具体的な事業機会や戦略を推進する組織
ボトムアップ型:現場からの発案が円滑に育成、量産化へと流れるよう規律を守り、定められた手順で事業を進める組織
トップダウン型:企業トップの主導で、新規事業のポートフォリオを作成する目的で設立されるラボや成長部門

 

・相反する目標を両立する一歩は、緊張状態を否定しないことだ。問題を両立できる課題と捉えなおせば別の可能性が浮かび上がる。