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【書評】『イノベーション・アカウンティング 挑戦的プロジェクトのKPIを測定し、新事業に正しく投資するための実践ガイド』ダン・トマ、エスター・ゴンス(著)

こんばんは、スズキです。
今日は『イノベーション・アカウンティング 挑戦的プロジェクトのKPIを測定し、新事業に正しく投資するための実践ガイド』アンドリュー・Jダン・トマ、エスター・ゴンス(著)を紹介します。

概要

 「アカウンティング」という言葉から多くの人が連想するのはP/LやB/Sといった「財務会計」ではないかと思います。本書が扱うイノベーション・アカウンティングは、キャッシュや在庫、未来への投資といった経営判断のための「管理会計」の適用範囲をイノベーションにまで広げたとき、自社の事業創生に対する成長や期待をどのようなKPIでもって測定すべきか、イノベーションをマネジメントするための「イノベーション会計」にあたります。
 従来の財務会計には「過去の事実のみで企業を評価していることから、潜在的な企業の強みやこれから起こりうる未来の期待値を評価できない」「イノベーションの創生に最も重要な資産である人や文化、プロセスを評価できない」といった欠点があります。本書はイノベーションの起こりやすい組織を作るために、組織が持つイノベーションの土壌となる無形資産やプロセスを正しく評価するための新しいKPI測定の実践方法を論じています。企業内部のイノベーション活動に対する投資指針、経営判断に悩まれている方にはお勧めの一冊です。

著者

・著者:ダン・トマ、エスター・ゴンス
・翻訳:渡邊 哲、安田 剛規

私の学び

 破壊的なイノベーションやブレイクスルーはマネジメントなどできない、という考え方を持つ方も少なくないと思いますが、大きな既存事業を抱える企業では時代の変化に対応し、どの新規事業にどの程度の資本を投資すべきかを判断するにあたり、本書で紹介されたイノベーションファネルといったイノベーションの種の成長度や期待値を測定する枠組みを活用することが非常に有効だと思います。
 特に、従来の財務会計の考え方では投資対効果(ROI)、マーケットサイズ、シェアなど「どれだけ儲かるのか?」という論点の議論にフォーカスしがちです。しかし本来は、イノベーションファネルの各プロセスにおいて「どのような学びを組織が得たのか?」という論点の議論にも正しくフォーカスをあてることが、数多くの失敗、撤退判断のなかから鉱脈を発見し、磨き上げるための近道なのだと思います。

【本書より引用】
・戦術的イノベーション会計:個別のイノベーションプロジェクトやそれに携わるチームを評価し、適切なアクションにつなげるための指標。プロジェクトがどの段階にあるか?またそのプロジェクトにいるチームメンバがどのようなパフォーマンスを発揮していたかを評価する。


・管理的イノベーション会計:イノベーションプロジェクトの全体進捗やイノベーションへの投資、撤退の意思決定の実施状況を評価するための指標。イノベーションファネルという考え方のもと、各案件の投資、撤退の判断のための評価をする。


・戦略的イノベーション会計:会社の将来を見据えた戦略的な事項を評価するための指標。既存事業と比べて新規事業にどの程度投資をしているのか?新規事業はこの先持続的に利益を生み出すまで成長するにはどのくらいの時間がかかるか?などを評価する。


・ファネル型イノベーションフレームワーク
①発見:解決する価値のある問題を特定したか?
②探索:私たちのソリューションで顧客の問題を解決できるか?
③採算性:顧客が自社のソリューションを購入してくれるか?
④拡大:ソリューションを規模拡大できるか?
⑤持続:通常のビジネスへ