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【書評】「ジョブ理論(イノベーションを予測可能にする消費のメカニズム)」クレイトン・M・クリステンセン (著)

こんばんは、スズキです。
今日は「ジョブ理論 イノベーションを予測可能にする消費のメカニズム (ハーパーコリンズ・ノンフィクション)」クレイトン・M・クリステンセン (著)を紹介します。

概要

消費者が商品を買う際には、何か目的があるはずです。消費者にはやり遂げたいこと(ジョブ)があり、そのジョブを解決するために商品を購入(雇用)する。つまり、そのジョブが発生する状況こそが商品購入の鍵(ニーズ)である、と著者は説きます。企業がアンケートの顧客の属性のみに基づき消費者の反応を分析しただけでは顧客の真の「ニーズ」に気づくことは難しい。大切なのは顧客にその行動をおこさせた原因、すなわち「片付けたいジョブ」である、と。「人がモノを買う行為そのもののメカニズム」をクリステンセン教授が解き明かした一冊です。

著者

Amazonより引用】

・クレイトン・M・クリステンセン。ハーバード・ビジネス・スクールのキム・B・クラーク記念講座教授。9冊の書籍を執筆し、ハーバード・ビジネス・レビュー誌の年間最優秀記事に贈られるマッキンゼー賞を5回受賞。イノベーションに特化した経営コンサルタント会社イノサイトを含む、4つの会社の共同創業者でもある。「最も影響力のある経営思想家トップ50」(Thinkers50、隔年選出)の2011年と2013年の1位に選出。
・タディ・ホール。ケンブリッジ・グループのプリンシパルで、ニールセン社のブレークスルー・イノベーション・プロジェクトのリーダーを務める。様々な企業に対し、イノベーションのプロセスを改善する支援をおこなっているほか、〈エンデバー〉など新興市場の経営トップに緊密な指導を提供している。
・カレン・ディロン。ハーバード・ビジネス・レビュー誌の元編集者。著書にNYタイムズ・ベストセラー『イノベーション・オブ・ライフ』(クリステンセン他と共著)。コーネル大学・ノースウエスタン大学メディル・ジャーナリズム学院卒業。2011年、アショカ財団によって世界で最も影響力のある女性のひとりに選出される。
・デイビッド・S・ダンカン。イノサイト社のシニア・パートナー。イノベーション戦略および成長に関する先進の研究者兼アドバイザーとして、企業経営者に対し、破壊的変化を導き、組織を長期的な繁栄が可能な体質に変換する指導をおこなっている。デューク大学卒、ハーバード大学で物理学の博士号取得。

私の学び

・顧客の購買行動を「どんなジョブ(用事、仕事)”を片づけたくて、その人あるいはその人達はそのプロダクトを雇用するのか?その裏で何を解雇するのか?」と問い直すことから考え始めるニーズの捉え方は、モノからコトへ、ドリルではなく穴を売れ、経験価値などが重要視される昨今のイノベーション、新事業創生において、確かにそうかも、と思わせられる手法のひとつだと思います。この捉え方を実際に1ステップずつ、戻ったり行ったりしながら丁寧に進めるというのがなかなか難しそうではありますが。

【本書より引用】

・ジョブとは、ある特定の商品やサービスを生活に引き入れることによって、その人自身が進歩することである。

・ジョブには、それが生じた顧客が困っている具体的な「状況」が含まれる。どこにいるか、それはいつか、何をしているか、誰と一緒か、30分前は何をしていたか、次は何をするつもりか、心理的プレッシャーはあるか、ライフステージはどうか、家族構成はどうか、など。

・ジョブ理論は「誰が」でも「何を」でもなく「なぜ」に注目する。「なぜ」はデータや数字ではなく、ストーリー。

・ジョブはそれが生じた特定の状況にのみ定義することができ、有効な解決策も特定の状況に関連してのみもたらすことができる。つまり「平均的」な解決策というものは存在しない。

・ジョブ理論のレンズを通すと、市場で同じカテゴリにくくられているプロダクトだけに競争相手が限定されることはない。

・人はジョブを解決するために、商品を「雇用」する。

・成功するイノベーションは、顧客のこれまでなし得なかった進歩を達成するものである

・ジョブはニーズのような漠然としたものではない。もっと具体的で機能的、社会的、感情的な側面も含む。「お腹が空いたから何か食べたい」ではなく「朝2時間かけて車で通勤する退屈な時間に、手を汚さずにお腹を満たして、かつちょっとした楽しみが得られるものが欲しい」。

・ジョブは作り出すものではなく、見つけ出すものである。ジョブは形容詞や副詞ではなく、動詞と名詞で表現できる。「早く書けるシステムが欲しい」ではなく、「手作業でタイプしたり編集したりしなくてもいいように、本を口述で書く必要がある」。また、ジョブは特定のニーズまたは嗜好ではなく適切な抽象度をもっている。「350mlのチョコ味のミルクシェイクが欲しい」は解決の方法がミルクシェイクに特定されており、ニーズや嗜好であるがジョブではない。

・ジョブで注目すべき観点
 ①生活に身近なジョブ
 ②無消費と競争する
 ③間に合わせの対処策
 ④できれば避けたいこと
 ⑤意外な使われ方