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【書評】「世界市場で勝つルールメイキング戦略-技術で勝る日本企業がなぜ負けるのか-」國分俊史、福田峰之、角南篤(著)

こんばんは、スズキです。
今日は「世界市場で勝つルールメイキング戦略-技術で勝る日本企業がなぜ負けるのか-」國分俊史、福田峰之、角南篤(著)を紹介します。

概要

 「ルールは政府がつくるもの」と受け身な日本企業に対して、欧米や中国など諸外国企業は「よりよい世界を形づくるうえでルールは常に革新されていくもの」という前提に立ち、ルールの議論を責務と考えています。このマインドセットの違いこそが、世界を変える社会課題解決の巨大なイノベーションが日本で生まれにくくなっている原因ではないか?その仮説のもと、本書ではルールメイキング戦略の知見を集積し日本で根付かせることを理念に立ち上がった多摩大学ルール形成戦略研究所のメンバーが中心となり、ルールメイキング戦略を日本の民間企業が実践するにあたっての視点を提示する一冊です。

著者

【Amamzonより引用】
・國分俊史。多摩大学大学院教授。多摩大学ルール形成戦略研究所所長。デロイトトーマツコンサルティング執行役員。パシフィックフォーラム戦略国際問題研究所(CSIS)シニアフェロー。

福田峰之多摩大学ルール形成戦略研究所客員教授。神奈川県第8選挙区(横浜市緑区青葉区)衆議院議員。前内閣府大臣補佐官。自由民主党知的財産戦略調査会常任幹事兼コンテンツ小委員会事務局長。

・角南篤。多摩大学ルール形成戦略研究所客員教授政策研究大学院大学副学長。内閣府参与(科学技術・イノベーション政策担当)。

私の学び

 日本の自動車メーカーのハイブリッド車アメリカやヨーロッパの規制(ゼロエミッションビークル)の基準から外され、モビリティ業界における日本企業の将来に大きな影を落とした話は記憶に新しいですが、そもそも何故こういった日本企業を狙い撃ちする規制が国際的なコンセンサスを持ちえたのか?その過程を理解し、今度は自分たちが主導してルールを作り国際的に認めてもらうためには何が必要か?

 ついつい法令順守・コンプライアンスといった法律や規制を守る(ルールテイカー)ことのほうに熱心になりがちですが、今後諸外国と対等あるいは優位にビジネスを進めていくためには、ルールを作る(ルールメイカー)側の視点を持ち裏側にある意図や狙いを想像すること、また自分や社会にとっておかしいと思うルールに対して自ら変えていく気概・行動力を持つことの重要性を感じさせられました。

【本書より引用】

・ルールメイクは「国益の最大化(安全保障・経済政策)」「企業利益の最大化(市場創造・競争力強化)」「地球市民の共通善の実現(社会課題解決)」という3つの異なる目的をもってデザインされる。


・ルールメイクの戦域「政策(外交・通商・軍事・規制・恩典)」「技術革新(標準化・マネタイズ・多様化)」「マーケティング(消費者行動の変化)」


・ルールメイクの構成要素「アジェンダセッティング(課題提起・戦略策定)」「枠組み形成(ゲームチェンジ)」「ルールデザイン(標準×規制)」「コンセンサス形成(WinWinシナリオづくり)」


・「法は目標なのです。法の目指す方向に社会が動いていけばそれで良いのです。すぐにではないかもしれませんが、遠からずこの規制値は実現されます」ヨーロッパにおいては法が施行されたからといって、即座に遵守されることが必ずしも前提とされていないことがあるのだ。


・「単に製品そのものではなく、製品を使うユーザに役立つ規格を作りなさい」ということである。


・何にもましてルールメイキング戦略の機運を高める効果を発揮するのが「ルールによる利益アップ」の成功体験を社内に見せつけることだ。


・日本企業が世界各地で創出している雇用創出量や税収効果を把握し、その地域出身の政治家が誰であり、その政治家が担当している主な政策、関係の深いポリシーメーカーの人間関係図を洗い出した「海外政治家影響力マップ」を策定することが有効である。


・イノベータシップに必要な5つの力。①未来構想力(未来の社会を構想する力)②実践知(自分の生き様や経験から紡ぎだす知恵)③突破力(実現への高い壁を乗り越える力)④Π型ベース(一つの専門だけではない幅広い専門知と、人類としての教養を備えた知性)⑤場つくり力(大きな未来を実現する仲間を巻き込みモチベートする力)