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【書評】「交渉の達人」マルホト・ディーパック 、ベイザーマン・マックス・H(著)

こんばんは、スズキです。
今日は「交渉の達人」マルホト・ディーパック 、ベイザーマン・マックス・H(著)を紹介します。

概要

 交渉術のプログラムはロースクールや公共政策大学院でも非常に人気が高いです。その理由は、複雑化、多様化、ダイナミックに移り変わる社会において、資源を配分し、競合する利害のバランスをとり、あらゆる種類の対立を解消するのに実用的で効果的な手法だと認められるようになってきたからと考えられます。

 交渉の達人とはいったいどういった人なのか?本書は「ウィン・ウィンの合意を得ること」という単純な交渉の見方を一掃し、ウィン・ウィンの思考様式ではうまくいかないときこそ効果を発揮する様々な原則を、国際政治や企業における事例とともに紹介した一冊です。

著者

Amazonより引用】
・マルホトラ・ディーパック。ハーバード・ビジネススクールの交渉術、組織、市場ユニットの准教授。MBA課程と企業幹部向けのさまざまなプログラムで交渉術を教えている。主な研究テーマは、交渉戦略、信頼構築、国際紛争・民族間紛争の解決、競争のエスカレーションの力学である。研究の成果は、経営学、心理学、紛争解決の各分野を代表する専門誌で発表されている。教育、研究両面で数々の受賞歴がある。学外の活動では、世界中の企業の研修とコンサルティングを行っている。
・ベイザーマン・マックス・H。ハーバード・ビジネススクール経営管理ジェシーイシドール・ストラウス教授。さらに、ケネディ行政大学院、ハーバード大学心理学部、定量社会科学研究所、ハーバード大学環境センター、交渉プログラムにも所属している。主な研究テーマは、交渉における意思決定、組織、国家、社会における意思決定の向上である。

私の学び

 交渉と聞くと「頭の回転が早くて弁の立つ人」という固定観念を抱いていましたが、本書で紹介されている「合意可能領域を見定めるステップ」を始めとした交渉の原則を知ることで、事前準備と訓練によって鍛えられるスキルであると認識を改めることができました。社内外の関係者や顧客とのコミュニケーションのなかでの役割分担、品質・サービスの責任分界など、思い通りにいかず困った場面に出くわした際、改めてBANTAやZOPAを書き起こしてみることで交渉に前向きに取り組めるのではないかと思います。

【本書より引用】
・交渉のステップ
 ①自分のBANTA(交渉が不調に終わった場合に取るべき最善の代替案)を自分に問いかけ、選択肢とその価値をすべて把握する。これによって自分の留保価値(交渉のテーブルを離れる基準点)を計算する。
 ②相手のBANTAを見極めて評価し、相手側の留保価値を計算する。
 ③相互の留保価値を踏まえてZOPA(双方の合意可能領域)を計算する


・自分側が最初に条件を掲示(アンカーを与える)すべきかどうかは、どれだけの情報を持っているかにかかってくる。要求が小さすぎれば確保できる価値も小さくなり、逆に要求が大きすぎれば取引が成立する可能性が低くなる。2つの懸念のバランスをいかにとるか。

・交渉においては、論点を増やすことによって相互の価値を創造することができる。同時に複数の論点を議論し、価値の最大化を目標にすべきである。

・交渉が成立した後に再交渉をすることは話を蒸し返すことにはならない。条件付きの交渉、あるいは合意後に新たな価値創造のための再交渉によりさらなるパレート最適を目指す。

・何を求めているかだけではなく、なぜ求めているかを訊く。

・交渉の盲点を減らすためには、多くの視点から意見をあつめ認識を拡げる。

・自分が弱い立場であることは明かさない。一方で、極端な弱さは逆に武器にする。(ex:東西冷戦時のポーランドの領土獲得)