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最近読んだ本の内容を紹介する書評ブログです。ビジネス書が中心です。これから皆様が読む本を選ぶ際の参考になれば幸いです。

【書評】「第3世代のサービスイノベーション」小坂 満隆 (編)

こんばんは、スズキです。
今日は「第3世代のサービスイノベーション」小坂 満隆 (編)を紹介します。

概要

 あらゆる産業でサービスの重要性が高まりつつあるなか、本書ではサービスイノベーションを3世代に分けて論じています。第1世代はコンビニエンスストアのPOSに代表される、顧客データをもとにイントラネットを活用したサービス価値創造。第2世代はAmazonロングテールビジネスやAirbnbのマッチングサービスに代表される、インターネットを活用したサービス価値創造。第3世代はIoTやAIを活用し、あらゆるモノとモノとが結びついた新たなサービス価値創造。この第3世代のサービスイノベーションとは具体的にどういったものなのか?その研究結果を著者らがまとめた一冊です。

著者

【本書より引用】
・小坂満隆(こさか みちたか)。1977年3月京都大学大学院工学研究科数理工学専攻修士課程修了。同年、(株)日立製作所システム開発研究所入所、同研究所所長、セキュリティ事業部長、等歴任後、北陸先端科学技術大学院大学に転出、知識科学研究科長歴任後、現在、知識科学系教授。システム工学、知識科学、サービスサイエンスの研究に従事、電気学会フェロー、計測自動制御学会フェロー、サービス学会理事他、学会活動に従事(工学博士)。

私の学び

 今の世のトレンドである「モノからコトへ」の根底には、本書で紹介されているS.L.Vargoの「サービスドミナントロジック」という考え方があるというように捉えました。サービスドミナントロジックが当たり前の世界では、サービスの価値は顧客が使用する瞬間(真実の瞬間)に決まる。つまり価値の有無は顧客が決めるということになります。

 真実の瞬間における顧客の体験価値を高めるためには、顧客接点に立つフロントステージだけではなく、その支援にあたるバックステージの従業員満足度やプロ意識、一体感が重要という考え方は、実際多くの企業で縦割りの壁が弊害になっているケースが多いと思われるだけに非常に頷ける話でした。

【本書より引用】
・グッズドミナントロジックに基づく経済論では、交換対象となるモノを貨幣という媒体に置き換えて価値を定量化した。一方、サービスドミナントロジックに基づく経済論では、価値はステークホルダーとリソースによってサービスという活動によって共創される。その提供価値は提供後の評判や注目によって左右される。


・サービスをデザインし新たな価値を創造するには、そのサービスを利用する顧客のタッチポイントにおける行動、思考、感情までを把握し顧客体験(カスタマーエクスペリエンス)を理解する必要がある。あわせてサービス提供者側の満足度、信頼性、効率性、利益を考えていく必要もある。


・サービスデザインの5の基本原則
 ①ユーザ中心主義

 ②共創

 ③インタラクションの連続性(ジャーニー)

 ④物的証拠(フック)

 ⑤ホリスティック(全体性)


・サービスの価値は、いくら事前に準備をしても多くの資金を投入しても、最終的に顧客に利用される瞬間にすべてが決まる。その接点(真実の瞬間)が起こる場をフロントステージ、その後方で支援を行う場をバックステージという。サービスプロフィットチェーンにおいては、フロントステージとバックステージの両方の従業員満足度の向上が企業価値の向上に直結する。


・価値共創プロセス
 ①場・関係つくり

 ②思いの共有

 ③価値の実現方法の設計 

 ④検証

 ⑤実現