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最近読んだ本の内容を紹介する書評ブログです。ビジネス書が中心です。これから皆様が読む本を選ぶ際の参考になれば幸いです。

【書評】「ビジネススクールでは学べない 世界最先端の経営学」入山 章栄 (著)

こんばんは、スズキです。
今日は「ビジネススクールでは学べない 世界最先端の経営学」入山 章栄 (著)を紹介します。

概要

 経営学というと、大学の経営学部、MBAビジネススクールで学ぶ学問というイメージを連想する、もしくはそもそもイメージをあまりはっきりと持てないという方もいるかもしれません。

 本書は、4半世紀前に作られたポーターの理論に基づく基本ツールを主の教科書とするビジネススクールでは最先端の経営学を学べない、と断じ、あらゆる企業の経営判断に使える学者の総意とまでは言えないが、日本のビジネスパーソンにとって示唆がありそうな興味深い経営学の研究成果を多く紹介しています。イノベーショングローバル化、組織学習、ダイバーシティ、競争戦略、リーダーシップ、CSR、女性の企業参加、同族経営といったテーマに関して経営学の観点から新しい知見を得たいと考える方にお勧めの一冊です。

著者

Amazonより引用】
・入山 章栄(いりやま・あきえ)。早稲田大学ビジネススクール准教授。慶応義塾大学経済学部卒業、同大学院経済学研究科修士課程修了。三菱総合研究所で主に自動車メーカー・国内外政府機関への調査・コンサルティング業務に従事した後、2008年に米ピッツバーグ大学経営大学院よりPh.D.を取得。同年より米ニューヨーク州立大学バッファロービジネススクール助教授。2013年から現職。Strategic Management Journal, Journal of International Business Studiesなど国際的な主要経営学術誌に論文を発表している。著書に『世界の経営学者はいま何を考えているのか』(英治出版)がある。

私の学び

・最先端の経営学論壇で討議されていることをまとめあげており、多くの論文を読まないと理解を深めにくいテーマについても短時間で効率的にポイントを知ることができるため、忙しい社会人のニーズにマッチした書籍であったと感じます。自分がチームや組織の在り方を考えるとき、事業の目指す方向性を議論するときなど、普段仕事のなかで考えるイシューに向き合う際の思考の軸として取り入れていきたいと思います。

【本書より引用】
経営学は思考の軸に過ぎない。思考に軸があることで考え方に一本筋が通り、より深く洞察が進むに違いありません。


・バーニーの競争戦略の3つの型
 ①SCP戦略:産業構造が安定した業界では、参入障壁を高めライバルとの競争を避ける寡占状態をいかに保つかが重要である。ビール、携帯電話など。
 ②RBV戦略:参入障壁が低い業界では、価値があり模倣されにくい経営資源を有効活用することが重要である。自動車など。
 ③リアルオプション戦略:不確実性の高い業界では、環境へ素早く柔軟に対応できることが重要である。IT業界など。


・経営者には3つの両利きのリーダーシップが求められるとタッシュマンは説きます。
 ①自社の定義するビジネスの範囲を狭めず、多様な可能性を探求できる広い企業アイデンティティ持つこと
 ②知の探索部門と知の深化部門の予算対立のバランスは経営者自身がとること
 ③知の探索部門と知の深化部門の間で異なるルール、評価基準をとることをいとわないこと

 

・人脈、友人関係などの人のつながりには、強弱があります。新しい知の組み合わせには、むしろ弱いつながりのほうが効果的です。イノベーションを起こすには、なるべく自分から遠く離れた知を幅広く探し、今自分の持っている知と新しく組み合わせることがその第一歩となります。これが知の探索です。

 

・ブレストは組織の記憶力を高める。デザイナーたちが顔を突き合わせてブレストすることは、だれがどのようなアイディアを持っているか、だれがどの製品に詳しいかなどについて知る機会となり、それが組織の記憶力、トランザクティブメモリーを高める結果となる。

 

・成功体験と失敗体験には望ましい順序がある。失敗をほとんどしないまま成功だけを積み重ねるとサーチ行動が不十分なまま成功してしまうので、長期的に見た成功確率は下がる。逆に長期的に成功確率を上げられるのは、最初に失敗体験を積み重ねて、それから成功体験を積み重ねていくパターン。

 

・大部分の多国籍企業は、売り上げの半分以上を本社のある地域からあげているのです。これを企業の「地域特有の強み(Regional Specific Advanteage)」と呼びます。自社のアジアで通用する強み(RSA)が、そのまま世界中で通用するFSA(企業固有の優位性)とはならないという認識を持つことが肝要です。

 

・これからはスパイきーなグローバル化が進む。情報集約型の人と人との交流を必要とするビジネスの国際化は、国と国の間で起こるのではなく、地域と別の地域で集中しておこるのではないか、という考え方です。米国と台湾で近年VC投資が盛んですが、これは米国の中でもシリコンバレーと台湾の新竹という狭いエリアの間で起きているにすぎません。最近は東京の渋谷、京都、福岡などで若い起業家が集積しつつあります。

 

ダイバーシティには二つの種類があり、タスク型(能力や経験)の人材多様性とデモグラフィー型(性別、国籍、年齢)の人材多様性がある。知の多様性にはタスク型がプラスの効果をもたらす。デモグラフィー型の多様性は一時的にマイナスの効果をもたらすが、複数次元のを入り込ませる多様性が長期的にはパフォーマンスを高める(フォルトライン理論)

 

・リーダーシップには2種類ある。トランザクショナルリーダーシップ(あめと鞭)と、トランスフォーメーショナルリーダーシップ(啓蒙型)であり、高い組織成果につながりやすいのは後者である。組織のミッションを掲げる、事業の将来性や魅力を前向きに表現し、部下と個別に向き合い成長を重視する態度が部下の内発的な動機を高める。

 

・優れたビジョンには6つの特性がある
 ①簡潔であること②明快であること③ある程度抽象的であること④チャレンジングなこと⑤未来志向であること⑥ぶれないこと

 

・事業のたたみやすさ、キャリアのたたみやすさのオプションが充実することが、多くの方々に起業という選択肢を促すのではないか。

 

・クリステンセンらはイノベーティブアントレプレナーに共通する思考パターンは以下の4つにまとめられると主張しました。
 ①クエスチョニング:現状に疑問を投げかける態度
 ②オブザービング:興味を持ったことに対して徹底的にしつこく観察思考する態度
 ③エクスペリメンティング:それらの疑問観察から、仮説を立てて実験する態度
 ④アイディアネットワーキング:自分がどう考えるか、ではなく、この問いを誰と話すべきか?と他者の知恵を活かす態度

 

ビジネススクール経営学教育で教えられる分析ツールは「部分」に焦点を定めたものです。現実には、これらの部分戦略は互いに関係しあっています。この、部分をつなぎ合わせつために必要な視点は業界、企業によって大きく異なる。だからこそ思考トレーニングとしてケース分析を行う必要がある。