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【書評】『「つながり」の創りかた: 新時代の収益化戦略 リカーリングモデル』川上 昌直 (著)

こんばんは、スズキです。
今日は『「つながり」の創りかた: 新時代の収益化戦略 リカーリングモデル』川上 昌直 (著)を紹介します。

概要

 私たちの身近な生活のなかにも月額課金制のビジネスが次々と登場し、サブスクリプションビジネスへの関心が高まっています。一方で、課金形態を安易に変更しただけでビジネスが簡単に生まれ変わり収益の向上につながる、という思い込みは危険であると本書は説きます。本書はビジネスモデルの視点からサブスクリプションの真意を解き明かし、サブスクリプション型のサービス全盛の時代において企業がユーザとの継続的な関係性を維持する「つながり」を持つことの重要性を論じた一冊です。

著者

Amazonより引用】
・川上 昌直(カワカミ マサナオ)。兵庫県立大学国際商経学部教授、博士(経営学)。1974年大阪府生まれ。福島大学経済学部准教授などを経て、2012年兵庫県立大学経営学部教授、学部再編により現職。「現場で使えるビジネスモデル」を体系づけ、実際の企業で「臨床」までを行う実践派の経営学者。専門はビジネスモデル、マネタイズ。初の単独著書『ビジネスモデルのグランドデザイン』(中央経済社)は、経営コンサルティングの規範的研究であるとして、日本公認会計士協会・第41回学術賞(MCS賞)を受賞。ビジネスの全体像を俯瞰する「ナインセルメソッド」は、規模や業種を問わずさまざまな企業で新規事業立案に用いられ、自身もアドバイザーとして関与している。また、講演活動や各種メディアを通してビジネスの面白さを発信している。他の著書に、『ビジネスモデル思考法』『マネタイズ戦略』(ダイヤモンド社)、『儲ける仕組みをつくるフレームワークの教科書』『課金ポイントを変える利益モデルの方程式』(かんき出版)などがある。

私の学び

 GAFAを始めとする多くの成功したテック企業が導入しているサブスクリプション型の課金形態ですが、ユーザからのお金の回収方法が優れていたから今の成功があるわけではなく、ユーザがサービスをやめたくなくなる仕組みを丁寧に作りこんでいるからこその成功である、ということを痛感しました。

 サブスクリプション全盛の時代に対応してゆくために、企業がユーザとのつながりを強化するためには、ユーザー活動チェーンなどのフレームワークを通してジョブを探索すること、メンバーシップなる仕組みなどを通してユーザとのタッチポイントを広く取り戦略的に生かしていくことなどが特に大切であると思いました。

【本書より引用】
・リカーリングとは、リカーリングレベニューの略であり、収益が繰り返すという意味です。収益が繰り返すという点において、フリーミアムもレーザーブレイドも、そして今注目されているサブスクリプションも同じ形態です。


・大切なことは企業がユーザに寄り添っているかどうかです。


・売り切りをリカーリングモデルへと変えるのはそんなに単純な話ではありません。課金のみをサブスクリプション的なものに変えたとしても、結局はうまく機能しないのです。


・リカーリングモデルへの転身を図ることを模索するならば、マネタイズを変えるだけではなく、ユーザへの価値提案もプロダクトからつながりへと変えることが不可欠です。転身しなかったとしても、売り切モデルのままつながりを強化することでビジネスモデルを生まれ変わらせることです。

サブスクリプションは、消費者と事業者が一定期間において契約関係にあり、その間に利用に対する料金の支払いがある状態を指します。デジタル系サブスクリプションSaaSというビジネスモデルによって成立しています。


・一見、収益性の面で優れているように見えるリカーリングモデルですが、その導入に際しては注意すべきことが大きく二つあげられます。一つ目は収益性のいたずらな追及です。二つ目は安値安定の罠です。リカーリングモデルリカーと向き合う際の重要な判断基準が必要利益です。


・必要利益を回収するには、売り切りモデルは販売数を、リカーリングモデルはユーザ数を見ています。デジタル系サブスクリプションは限界コストがゼロに近いため、継続の拘束力がなくても損害は少ないと言えますが、モノ系サブスクリプショでは原材料や物流費がかかるため、そこに必要利益を織り込むと相当な課金回数が必要となります。


・契約で縛るのではなく、いかにユーザに喜んで続けてもらえるのか、いかにユーザが自発的に利用したくなるようにするのか、それこそが重要なポイントなのです。
・つながりの強い企業と弱い企業の特長は、主に次の5つで明らかになります。すなわち①消費トレンド②ユーザへの価値提案③ユーザの分析視点④ユーザへの対応⑤事業設計の基準です。


・価値はプロダクトが決めるものではなく、ユーザが決めるもの。リカーリングモデルではジョブ思考が必要条件に。


・ユーザー活動チェーンは、ユーザーの購入するまでの活動が分かるだけではなく、ユーザーがいかに生活をアップデートし、さらにアップグレードさせようとしているか、そのプロセスを詳細に可視化します。活動チェーンのスタートにある問題認識から始めても良いですが、ビジネスパーソンがそこから着手するのは難しいです。そこで、なぜ購入に至ったのかをさかのぼってみる方法をお勧めします。


・タッチポイントを広くとることは、二つの意味で企業に収益増大のチャンスをもたらします。一つ目は、その企業独自の差別化要因を見出せることです。二つ目はビジネスチャンスが拡大することです。


・ユーザをメンバーとみなして関係性を継続するメンバーシップという概念こそがつながりを強化します。メンバーシップとは、メンバーが自分自身の成果を出すために結ばれる企業との互恵関係です。


サブスクリプションはマネタイズの問題のように見えて、実はメンバーシップが確立できているかどうかの問題なのです。