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最近読んだ本の内容を紹介する書評ブログです。ビジネス書が中心です。これから皆様が読む本を選ぶ際の参考になれば幸いです。

【書評】「売上につながる「顧客ロイヤルティ戦略」入門」遠藤直紀、武井由紀子 (著)

こんばんは、スズキです。
今日は「売上につながる「顧客ロイヤルティ戦略」入門」遠藤直紀、武井由紀子 (著)を紹介します。

概要

 「お客様のために」と顧客満足(CustomerSatisfaction)を掲げる企業は多い。しかし「顧客満足(CS)のための活動」と、本書で紹介される「顧客ロイヤリティ戦略」とは似て非なるものである。前者が「お客様の期待に応えること」を目指すのに対し、後者は「お客様の期待を良い意味で裏切ること」までを目指す。

 本書は、長期的な顧客志向の経営を実践することで顧客が喜び、その結果として継続的に企業に収益がもたらされるための方法論を解説しています。自分たちの事業、プロダクト、サービスのファンを増やす顧客ロイヤリティ創出に今から取り組もうとする方の入門書としてお勧めの一冊です。

著者

Amazonより引用】
・遠藤直紀。株式会社ビービット代表取締役横浜国立大学経営学部卒。ソフトウエア開発会社を経てアンダーセンコンサルティング(現アクセンチュア)入社。通信業のインターネット活用戦略立案等に従事した後、2000年ビービット設立。現在は東京・台北・上海の3拠点にて顧客ロイヤルティ経営、およびユーザ中心のデジタルマーケティングを支援。共著書に『ユーザ中心ウェブサイト戦略』(ソフトバンククリエイティブ)。TEDxUTokyo2014にて「貢献志向の仕事」講演。経済同友会会員。

・武井由紀子。株式会社ビービット取締役。早稲田大学政治経済学部卒。アンダーセンコンサルティング(現アクセンチュア)組織コンサルティング部門を経てビービット設立に参画。金融機関、製造業、メディア、建設等幅広い業界で顧客志向アプローチによるコンサルティング経験を有する。共著書に『ユーザ中心ウェブビジネス戦略』『ユーザ中心ウェブサイト戦略』(共にソフトバンククリエイティブ)、『ウェブ・ユーザビリティルールブック』(インプレス)がある。

私の学び

 今の世で隆盛を迎えているサブスクリプションビジネスにおいては「顧客との関係の長期継続」が重要視されています。その「長期継続」のためには、定性と定量の顧客ロイヤリティの指標をもって正しく現状を把握すること、現場でできる改善と組織一体として取り組むべき改善をうまく使い分けて実行してゆくこと、が必要です。

 本書では実際に顧客ロイヤリティ創出を実践したヤマト運輸セブン銀行などの成功事例や、実際に調査やフレームワークの検討をした際に陥りがちな失敗談なども交えながらステップの実践手法を紹介しており、いざ自分が現状把握と改善実行に取り組むときの指南として非常にわかりやすく、使いやすいと感じました。

 以下、特に印象に残った本書の引用です。

【本書より引用】
・「顧客満足経営」ではなく「顧客ロイヤリティ経営」と定義するのは、満足と愛着を区別するためである。満足は顧客が言語化できる期待に応えることで作ることができるが、愛着を作るには、顧客自身もわかっていないような潜在的なニーズに応え、より大きな満足感や感動を提供する必要がある。


・ロイヤルカスタマーを作るための二つのポイントは「正しいものさし=ロイヤリティ指標を持つこと」と「カスタマーエクスペリエンスを改善することである」である。


・ロイヤリティ指標として「NetPromoterScore:正味推奨者割合」が主流となってきている。


・カスタマーエクスペリエンスの具体的な捉え方のひとつとしてカスタマージャーニーマップがある。その利用目的は「カスタマーエクスペリエンスの課題発見」「関係者とカスタマーエクスペリエンス、およびその課題の共有」「カスタマーエクスペリエンス(業務プロセス)の現状把握」の3種類あり、これを曖昧にしたまま使うと失敗する。


・顧客の立場に立とうとして顧客の姿が頭に思い浮かんだ人は失格。本当に顧客の立場に立てたのであれば、頭の中に浮かぶ景色はあなたの企業、製品、また社員の顔や姿でなくてはならない。それは例えば、家族にプレゼントを買っていった時の家族の喜ぶ顔を想像するのではなく、プレゼントを買って帰宅するあなたの姿をみたときに家族がどんな気持ちになるかを想像するということである。


定量調査は大きな母集団に対して調査が実施できるため、顧客全体の意識を把握することに優れている。一方で、インタビュー調査や行動観察調査などの定性調査では、顧客の言葉や態度、表情を直接かつ双方向に把握できることで、顧客が実際に直面した事象を時系列で確認したり、顧客の感情や心理に迫ることができる。定量調査と定性調査はお互いに補完関係にある。


・定性調査を通じて顧客の真実を理解することは、顧客の役に立ちたいという純粋な動機を目覚めさせる強大な機会ともなりうる。


・改善には「フロントライン(現場)改善」と「戦略的改善&イノベーション」の2種類がある。改善の実行においてはユーザ中心設計手法という方法論を紹介する。